家系図の作り方を専門業者が解説!家系図作成のポイント

2025.02.18

家系図の作成は、自分のルーツを知ることに繋がります。それは単に祖先の名前や家紋を調べるだけでなく、“自分という存在”を形づくってきた歴史をひも解く貴重な機会です。

時代が進むにつれ、私たちは便利な暮らしを手に入れましたが、その一方で、核家族化の拡大などにより昔の家族の生き方や背景がどのようなものだったのかを知る機会は少なくなってきています。

こうした状況の中、あらためて先祖の歩みを記録として残す「家系図」を作ろうと考える方が増えています。先祖の足跡を辿っていくことで、今まで知らなかったエピソードに触れることができるかもしれません。あるいは、ご家族とのコミュニケーションが深まり、家族や親戚同士の絆を再確認するきっかけにもなるでしょう。

本記事では、家系図を作るメリットや、調査の手順、作成方法、そして注意すべきポイントまで、初心者の方でも分かりやすいように詳しく解説していきます。

家系図を作るきっかけ

世の中には「有名な武将の末裔」や「地域の名家」といった話を耳にすることがあります。それを聞くたびに、自分のルーツはどうなっているのだろうと思ったことはありませんか?もしかしたら、自分も”何者か”の子孫なのかも知れないと。

もしくは、ただ純粋な気持ちから自身の先祖に興味を持つこともあるでしょう。

今日に至るまでの家系の歴史を深く知ることで、今の自分にとって生きる活力になることがあるかも知れません。家系図を作るきっかけや理由はさまざまですが、そのメリットは多くあります。

「”終活”の一つとして何か後世に残せるものを作りたい」と思ったり「今後の相続手続きを円滑に進めるための準備をしておきたい」と思ったり、自分より後の世代へ向けて作成を検討する方もいるでしょう。

家系図を作る前に知っておきたいポイント

家系図をどこまで遡るか決める

家系図作りを始める前に、まずは「どの時代まで調べるのか」「どの家系(名字)を調べるのか」を大まかに決めておきましょう。たとえば、江戸の幕末ごろまでを遡る調査に留めるのか、はたまた江戸時代以前まで可能な限り遡ってみるのかによって、必要となる調査時間や費用、労力が大きく変わります。

家系図は一度作り始めると「もう少し先を見てみたい」と欲が出ることも多く、気付けば際限なく調査が広がります。そのため、最初に“調査のゴール”をある程度定めておくと、途中で挫折せずに最後まで完成形を目指しやすくなります。

情報源と収集方法の基本

家系図を作るうえで最初に手がかりとなるのは、戸籍謄本や除籍謄本です。役所や本籍地の市区町村で請求し、まずは自分や親の戸籍を確認するところから始めましょう。古い時代の情報が必要な場合は、墓石や過去帳、位牌、郷土史や古文書、図書館などを調べると役立ちます。

また、親族が所有している古い写真や手紙、日記などから貴重なエピソードを得られることがあります。ヒアリングを行う際は、その場限りにならないよう録音やメモを活用しながら、可能であれば複数の親族から話を伺うと、より正確な情報を得られるでしょう。インターネット上で地域の歴史を調べたり、専門家や郷土史研究者のブログをチェックしてみるのもおすすめです。

プライバシーと個人情報の取り扱い

家系図作成では、家族や親戚のデリケートな個人情報を取り扱うケースが多くなります。名前や生没年月日だけでなく、結婚や離婚、養子縁組といった事実に触れることもあるでしょう。

これらの情報を第三者に公開する場合は、該当者から事前に同意を得ることが大切です。特に、インターネットやSNS上で家系図をシェアする際には、プライバシー保護の観点から公開範囲や情報の伏せ方を慎重に検討してください。

家族・親族への協力を得るためのポイント

家系図を作るうえで欠かせないのが、家族や親戚の協力です。過去帳や位牌はもちろん古い写真や文献を借りたり、昔の暮らしぶりや祖先に関する思い出話を聞かせてもらうことで、戸籍だけでは得られない生きた情報やエピソードが手に入ります。

協力をお願いするときには、「家族の歴史を形に残したい」「後世のために大切な資料をまとめたい」といった作成の目的を丁寧に伝えましょう。プライバシーへの配慮とともに、なぜこの情報が必要なのかをきちんと説明することで、親戚にも安心して協力してもらいやすくなります。遠方の親族とは電話やオンライン通話を活用し、少しずつ話を集めていくと良いでしょう。家系図作りを通じて、家族や親戚との交流が深まるのも大きな魅力の一つです。

家系図作成に必要な道具

効率よく家系図作成を進めるためには、以下の道具を準備しておくことをお勧めします。

  • 戸籍謄本・除籍謄本
  • スマホやカメラ(記録用)
  • 筆記用具(カラーペンや定規があると便利)
  • 大判の紙(家系図の下書き作成用にあると便利)
  • メモ帳や録音機器(親族へのヒアリング用にあると便利)
  • パソコンやエクセルソフト(デジタルツールで作成したい場合に必要)

特に親族へのヒアリングは大きな情報源になるので、会話を記録できる準備をしておくと役立ちます。

業者に依頼するか自分で作るかの比較

家系図の作成方法には、「自分で一から調べて作る方法」と「プロの家系図作成業者に依頼する方法」があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、どちらが良いかは目的や予算、かけられる時間によって異なります。

費用面

自分で作る場合

主に費用がかかる工程となるのが、戸籍謄本や除籍謄本の取得です。戸籍1通あたり450円または750円なので、4〜5世代分を調べると数千円から1万円ほどかかる計算となります。戸籍を調べた段階では、祖先の名前、親族関係、本籍地などが分かりますが、どんな職業についていたのか、その人物と歴史上の出来事はどう繋がっているのか、姓や家紋にはどんな由来があるのかなど、祖先の生きていた時代のストーリーまでは知ることができません。そのため、戸籍調査の後に現地調査をする場合には、交通費や宿泊費が必要になることもあります。

業者に依頼する場合

実は、世の中には家系図を専門として、調査や作成を依頼できる業者が存在しています。

プロに依頼すると、内容や調査の範囲によって変動しますが、おおよそ5万円〜50万円ほどかかります。自分で調べる時間がない方や、詳細な情報を求める方は依頼を検討するのも一つの方法です。

まずは自分でできるところまでお金をかけずに進めることもできますが、戸籍を取得するごとに「この先はどうなっているのだろう?」と次のステップが気になってくるものです。業者に依頼すると相応の費用がかかることも承知の上で着手するのが良いでしょう。

時間と手間

自分で作る場合

自分で作成する場合は、戸籍取得の手続きをはじめ、家系図ソフトやエクセルなどでデータ整理をしたり、史料や現地でのリサーチを行ったりと、多くの工程を自分で進める必要があります。

特に、戸籍は思った以上に取得漏れや誤記載などがあるため、追加の調査や再請求が必要となる場合もあります。その都度役所に足を運ぶ、または郵送申請する手間や書類のチェックなど、時間や労力がかかる点はあらかじめ想定しておきましょう。

業者に依頼する場合

業者に依頼する場合は、最初の打ち合わせや必要書類の準備こそ必要ですが、その後の戸籍取得や現地調査などは基本的にプロが代行してくれます。煩雑な手続きを省けるため、家系図作成に割く時間を最小限に抑えられ、かつしっかりとした家系図ができる点が大きなメリットです。

ただし、業者によっては依頼内容の確認や調査報告など、何度かやり取りを行う必要があります。また、調査が進むごとに追加費用や作業範囲の変更がある場合があるため、こまめなコミュニケーションを取りながら進めることが大切です。

最終的な完成度

自分で作る場合

自分で家系図を作成する大きな魅力は、家族や先祖にまつわるエピソードを“自分の言葉”でまとめられることです。調査途中で見つけた資料や、親戚との会話の中で得た情報などを自由に付け加えられるため、自分なりのこだわりを反映した家系図に仕上げることができます。

一方で、調べられる範囲に限界があったり、専門的な知識が不足しているために、誤った情報を織り込んでしまうリスクも考えられます。情報の精度と質を保つには、根拠や出典をしっかりと確認する手間が欠かせません。

業者に依頼する場合

業者に依頼すると、経験豊富な調査員が戸籍取得だけでなく、文献・現地調査などを総合的に行い、信憑性の高い情報を得られる可能性が高まります。また、完成した家系図のデザインも、見やすく美しく仕上げてもらえることが多く、家宝として末永く保管できるクオリティの高い成果物が期待できます。

ただし、自分自身が直接調査に携わらない分、家系図にまつわる“ストーリーを知る実感”は薄れてしまうかもしれません。完成物としては質が高くとも、家族の歴史を“体験”として味わいたい場合は、自分で作るプロセスを取り入れるのもおすすめです。

家系図作りのステップ

ではここから、家系図作成に必要な情報の集め方についてご紹介します。

ステップ1|戸籍取得

戸籍謄本や除籍謄本を取得し、家系図の基礎となる情報を集めます。

①自分の戸籍を取得する

まずは自分の戸籍謄本を取得し、記載されている親や配偶者の情報を確認します。

②親の戸籍を取得する

親の本籍地を調べてさらに上の世代へ進めます。

③古い戸籍を請求する

明治時代以前の情報が記載された除籍謄本や改製原戸籍を取得します。

この作業は一見地味ですが、戸籍をたどるごとに「次は何が分かるのだろう?」というワクワク感を感じられます。また、知らなかった親族の名前や職業を知るたびに「こんな人が自分の先祖だったんだ」と驚きや感動を覚える瞬間もあるかも知れません。

ステップ2|文献調査と現地調査

戸籍だけでは分からない情報を補うために、現地調査や文献調査を行います。例えば、墓石や家にある過去帳や位牌を確認したり、地元の図書館で郷土史を調べたりします。現地調査は、親族が住んでいた地域などを実際に訪れることで、土地の空気や雰囲気を肌で感じることができます

現地で偶然出会った住民の方が「この家系の墓地はあちらにあるよ」と教えてくれるなんていうことも。きっと、現地ならではの情報を得られる貴重な機会になるはずです。

ステップ3|家系図として形にまとめる

戸籍調査や現地調査・文献調査などで情報が揃ったら、いよいよ家系図として「形」にまとめていきます。

家系図の作成には、手書きでのアナログ形式、Excelなどのデジタルツールを使った形式、イラストレーターを使ったタイプの主に3パターンがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。手書きならではの温かみや自由度の高さを重視するのか、編集や複数人での共有などデジタルの利便性を重視するのか、自分のスタイルや用途に合わせて選びましょう。

手書きの場合

最初は手書きで家系図を作るのが手軽です。

まず、A3以上の大判用紙を準備し、下書きの段階から余裕をもって配置できるようにしましょう。家系図は「自分」や「調査の起点となる祖先」を中心に置き、親世代や祖父母世代といった形で、外側に向かって世代を広げていくと全体構成が分かりやすくなります。

線を引く際は、親子関係は縦に、配偶者関係は横に、兄弟は並列に配置するなど、ある程度ルールを決めておくと整理がしやすいです。男性は青、女性は赤など色分けをしておくと、ひと目見ただけで人物の性別や血筋のつながりがパッと理解できます。

さらに、人物名や生年月日はもちろん、「どんな土地で生まれ、どのように暮らしていたのか」「当時の社会情勢や歴史的背景はどうだったのか」といった情報もメモとして書き添えておくと、家系図自体が「家族の歴史辞典」のように充実します。完成後は、クリアファイルや筒状のケースに入れ、湿気や日光で劣化しないように保管すると良いでしょう。

Excelを活用する場合

まず、家族それぞれの基本情報を表形式で整理しておくとスムーズです。名前や生年月日、続柄などの項目を列見出しとして準備し、下に行を追加していくイメージです。次に、図形やテキストボックスを使って人と人の関係性を矢印や線でつなげていきます。

Excelの「挿入」→「図形」機能を活用すると、人一人ひとりを四角や丸で表し、そこに名前や必要情報を入力することができます。線の色や太さも自由にカスタマイズできるので、手書きと同様に性別や世代ごとに色分けを行って、見やすくデザインしましょう。

また、テンプレートを使うとレイアウトが最初から組まれているため、初心者でも比較的簡単に形になります。さらに「もっとこうしたい」と思った部分はカスタマイズしやすいのがExcelのメリットです。
修正や追記はワンクリックで行えますし、セルに入力した人物情報をコピー&ペーストで増やせるため、調査を進める中でどんどん家系図が大きくなっていっても対応しやすいでしょう。

イラストレータを活用する場合

イラストレーターを活用して家系図を使う場合、その操作スキルさえあれば、なんら制約がなく、断然に綺麗で見やすい家系図を作ることができます。また手書きやエクセルで作るのと違い、追記や変体仮名の再現性もイラストレーターであれば、十分に対応することができます。

ただ、家系図作りのためにだけイラストレーターのスキルを覚えるのはちょっと負担が大きいので、そこは自分でそのスキルを習得するか、もしくはすでにスキルをもっている家族や親戚に相談するというのもありかもしれません。

家系図を作る時の注意点

家系図作成には、多くのメリットがある一方で、気をつけておきたいポイントも存在します。

家族や親族との関わりや個人情報の取り扱いなど、慎重に進めるべき箇所もあります。
以下では、家系図作りの際に注意したい主なポイントをいくつかご紹介します。

1. 情報の正確性を重視する

家系図は、過去の情報をもとに構築されるため、戸籍や記録の正確性が重要です。戸籍謄本や除籍謄本の情報を写し間違えないように、確認作業を丁寧に行いましょう。また、親族からのヒアリング情報も、可能であれば複数人に確認することで正確性が増します。

2. プライバシーに配慮する

家系図を作成する過程で、親族や関係者の個人情報を扱うことになります。これらの情報を第三者に公開する場合は、事前に本人の同意を得るようにしてください。特に、インターネット上に公開する場合は、プライバシー保護を徹底することが大切です。

3. 調査や作成に時間をかけすぎない

家系図作りは奥が深く、調査を進めるうちに次々と新しい情報が見つかることがあります。しかし、あまりに時間をかけすぎると、途中で挫折してしまうことも。最初に目標を明確にし、どの世代まで調べるのか、どの程度の情報を盛り込むのかを決めておくと良いでしょう。

家系図を作ることで得られるもの

家系図の作成は、自分のルーツを知る旅そのものです。費用も時間もかかる工程もあります。完成までの苦労はありますが、それ以上に得られる喜びや発見が必ずあるはずです。ぜひこの記事を参考に、あなたも自分だけの家系図作りに挑戦してみてください。

まとめ

家系図の作成は、先祖や親族の歴史を丁寧に掘り下げる「自分だけのプロジェクト」です。戸籍調査や文献調査、現地調査を積み重ねる中で、多くの発見や驚き、そして家族への思いが深まる瞬間を体感できるでしょう。一方で、個人情報の取り扱い、調査範囲の設定、親族への配慮など、慎重に進めなければならない点もあります。

しっかりと準備をして、それぞれの課題をクリアしながら作業を進めていくことで、より正確で充実した家系図を完成させることができます。最終的には、この家系図が自分だけでなく、子孫や家族にとっても大切な「家族の物語」として受け継がれていくはずです。まさに”アイデンティティ”の形成に大きく寄与します。ぜひ、楽しみながら取り組んでみてください。