NHK総合テレビ「ファミリーヒストリー」で2012年のレギュラー番組化以降、
数多くの家系図を作成してきた家系図調査専門会社です。
コラム COLUMN
福山雅治のファミリーヒストリーに見る、家系図調査の奥深さ
2025.08.27
著名人の家族の歴史を取材し、「アイデンティティ」「家族の絆」を見つめるNHKのドキュメンタリー番組「ファミリーヒストリー」。その中でも大きな反響を呼んだのが、福山雅治さんの回です。
放送では、曽祖父母から両親、そしてご本人に至るまで、戸籍や文献、そして人々の記憶を丹念に重ね合わせながら、福山家の歩みが明らかにされました。今回は、家系図作成と調査の専門家の視点から、この回で行われた家系図調査のプロセスやポイントを解説していきます。
先祖のルーツを戸籍からたどる
家系図調査の出発点は、やはり戸籍です。福山家のルーツをさかのぼると、福岡県柳川市に本家が存在することが分かりました。戸籍は明治以降の記録が中心ですが、それをさらに遡っていくことで、江戸末期(幕末)〜明治初期生まれの先祖まで遡ることができます。福山さんの場合、曽祖父は安政生まれ。つまり幕末に生まれた人物が先祖として登場しました。
柳川市には本家が残っており、そこに伝わる資料や写真、さらに聞き取り調査によって、戸籍の文字情報では知り得ないエピソードが見えてきます。さらに柳川古文書館に残る大正13年の記録からは、曽祖父が仏具職を営んでいたことが確認されました。家業や職業は戸籍に書かれないため、博物館や古文書館などの公的資料が欠かせません。また、地元の神社には曽祖父の名が刻まれており、地域の信仰や共同体の中に先祖が確かに存在したことが浮かび上がります。
一方、祖母の系譜は山口県山口市に遡り、女学校に通っていた記録や文集なども確認されました。このように学校や地域の施設に残る記録も、家族史調査では大切な情報源になります。その後、祖父母は長崎へと移り住み、商工人名録にその名前を残しました。
戦中・戦後を生きた祖父の記録
続いて描かれたのは、祖父「明」さんの人生です。長崎といえば忘れてはならないのが原爆。戦時中の出来事は、戸籍や住民記録だけでは知ることができません。ここで重要となるのが「記憶の記録」です。
福山家には、祖母が残したテープがあり、肉声で当時を語る貴重な資料が残されていました。さらに、被爆者には「被爆者健康手帳交付申請書」が存在し、そこには当時の状況が克明に記録されています。原爆資料館の学芸員が地図などをもとに検証し、祖父の原爆体験を番組内で追っていました。
また、父の同級生からの証言も紹介され、記録だけでなく人々の記憶が家族史を支えていることが示されました。調査の現場では、こうした「当事者や同時代人への聞き取り」が非常に重要であり、親世代・祖父母世代であれば、近隣の住民や同級生から話を聞くことで、戸籍や文献に残らない「生きた歴史」を取り戻すことができます。
母方・山口家のルーツ
母方のルーツも丁寧に追跡されています。山口家をたどると、福岡県大川市に親戚が暮らしており、そこには古い写真が残されていました。福山さん本人も知らなかった存在が浮かび上がったのは、家系図調査の大きな成果といえます。戸籍をたどることで、思いがけない親族やエピソードと出会えることは珍しくありません。
父母と息子・雅治へ
さらに番組では、父母の世代を経て、息子である福山雅治さんへと物語がつながっていきます。特にユニークなのは、父が麻雀の名手であったという点。大会での優勝記録が「麻雀新聞」に残されていました。趣味や特技といった一見プライベートな領域でも、新聞・雑誌・団体の記録に残っていることがあります。これもまた、家族史を彩る重要な要素です。
雅治の物語とファミリーヒストリーの意義
最後に、番組は福山雅治さんご本人の物語へと結びつきます。家族の歴史をたどることで、本人の歩みがどのような背景に支えられているのかが見えてきます。
「ファミリーヒストリー」が示すのは、有名人の話だから特別なのではなく、誰の家族にも物語が眠っているということです。戸籍を出発点に、本家や親族、地域の資料館、学校や寺社、そして人々の記憶を重ねていくと、単なる系譜表ではなく「生きた歴史」が浮かび上がります。
まとめ
ファミリーヒストリーの福山雅治さんの回は、家系図調査の教科書のような構成でした。戸籍を基盤に、本家・神社・古文書館・学校といった複数の資料を丁寧に突き合わせ、さらに被爆者の記録や肉声のテープ、近隣住民の証言を積み重ねていく。この多角的なアプローチによって、福山家の歩みが立体的に描かれました。
家系図の調査・作成は、最終的にただ名前を並べるだけのものではなく、そこにどんな生活や出来事があったのかを掘り下げる作業です。福山雅治さんのファミリーヒストリーが感動を呼んだのは、まさにその点にありました。誰の家にも、語り継がれるべき歴史があります。本記事を通じて、読者の方々が自分自身のルーツに関心を持つきっかけとなれば幸いです。