NHK総合テレビ「ファミリーヒストリー」で2012年のレギュラー番組化以降、
数多くの家系図を作成してきた家系図調査専門会社です。
コラム COLUMN
ファミリーヒストリー「松岡修造 放送回」の考察
2025.09.11
情熱的な言動で多くの人に愛されるテニスプレーヤー松岡修造さん。
2025年8月18日に放送されたNHK「ファミリーヒストリー」では、その情熱の源泉を探るかのように、父母、祖先、そして曽祖父・小林一三に至るまで多彩なルーツが描き出されました。
今回のコラムでは、家系調査の専門家の立場から、番組で行われた調査のポイントや面白さを振り返ってみます。
第1章 曽祖父・小林一三のルーツ
番組冒頭を飾ったのは、曽祖父である小林一三の人生です。阪急電鉄、宝塚歌劇団、東宝などを創設し、日本の近代を支えた伝説的実業家。その姿は昭和32年放送のテレビ番組で松下幸之助氏と対談する映像にも残されており、過去のテレビや新聞、雑誌といった資料を調べれば、当時の人物像を生き生きと確認できます。
小林家のルーツは山梨県韮山にあり、実家は布屋という豪商でした。さらに江戸後期に生まれた5代前の小林小平治の墓が紹介されました。墓石は先祖調査の貴重な手がかりであり、文字から没年・戒名・家族関係などが読み取れます。また、墓石に刻まれた没年から一三の母が出産直後に亡くなっていたことも、判明したのは印象的でした。
調査では、親族で小林家を継ぐ小林公一さんが登場。親族から伝え聞いた話は戸籍や文書に残らない部分を補ってくれる貴重な証言となります。さらに慶應義塾に進学した一三の足跡は、アルバムや自筆の小説として学校に残されており、学生時代の痕跡を直接確認できることも番組ならではの発見でした。
その後、三井銀行、阪鶴鉄道を経て、自ら箕面有馬電気軌道(のちの阪急)を設立。NHKには一三の次女の映像が残されており、子孫の証言とともに肉声や映像資料が加わることで、単なる年表を超えた生きた家族史が描かれていきます。
第2章 松岡家のルーツ
松岡家の調査では、修造さんの高祖父の名が奇しくも「松岡修三」であったことが判明しました。これは戸籍を丹念に調べたことで分かった事実であり、家系図調査の基本に戸籍があることをあらためて示しています。
宝塚市のお寺には、その高祖父・修三が寄進した曼荼羅図が残っていました。寺社に残る資料や記録、位牌は、先祖の社会的役割や信仰を知る重要な資料です。さらに、現在も宝塚に住む遠縁の親族とのつながりが明らかになり、戸籍を通じて新たな親戚や証言者を発見する可能性があることが紹介されました。
地元資料には、初代修三の立身出世に関する記述も残っており、地域の郷土誌や町史から先祖の名前を見つけることもできます。その後、大阪へと移り住んだ足跡や、別の松岡家に残された記録などが紹介されました。
また、戦中期には「松岡汽船」の存在が浮かび上がり、海事図書館で資料が確認されました。家族の営みが戦争や経済活動と深く関わっていたことを示す好例といえるでしょう。
第3章 母方・山本家のルーツ
母方の山本家は、静岡市清水区にルーツがあることが戸籍調査で判明しました。戸籍は家系図調査の出発点であり、地名や続柄から親族を探し当てることができます。
実際に静岡には今も親族が住んでおり、遠縁を訪ねることで新たな証言や写真が発見されました。山本家は名主の家柄で、こうした格式のある家では古文書や土地台帳、年貢の記録などが残っている可能性が高いものです。
また、静岡県立科学技術高校に残された卒業アルバムや文集からも痕跡が確認されました。学校に残る資料は世代を超えて残されるため、母方のルーツを知る手がかりとして非常に有効です。
第4章 父母、そして修造へ
番組後半では、父母の世代から修造さん本人へと物語がつながります。父の後輩が健在で、当時を語る「生き証言」が登場したのも印象的でした。父母世代であれば、まだ同世代人が残っており、直接の証言が得られる可能性があります。
さらに、修造さんが大学選手権で優勝した際の記事が新聞に残っており、新聞や業界紙といった一次資料が家族史の補強となりました。スポーツや趣味、仕事にまつわる活動は、思いがけず紙面や業界誌に記録されていることがあります。
まとめ
松岡修造さんのファミリーヒストリーは、曽祖父・小林一三という近代日本を代表する実業家から、松岡家の立身出世、母方山本家の名主の系譜、そして父母を経て本人の情熱的な歩みへとつながる壮大な物語でした。
番組を通じて示されたのは、戸籍を起点に墓石、寺社、学校、郷土資料、図書館、新聞、親族証言など多様な資料を組み合わせることの重要性です。名前や日付の羅列にとどまらず、そこに暮らした人々の息遣いや時代背景を浮かび上がらせることで、家族史は生きた歴史になります。
修造さんの情熱の源泉が、先祖たちの挑戦や地域社会との関わりにあったことを、番組は見事に描き出しました。誰の家にも、熱く語り継がれるべき物語が眠っている。そのことを改めて実感させられる回だったといえるでしょう。